「あすなろ」昭和41年3月札幌市立大通小学校6年3組卒業文集

6.大久保先生からのメッセージ

●秋野修一君 「吹雪より早く着ており???」

・仕事の速い君。クラスの皆に愛された君。涼やかな眉が思い出されます。

●新知恵利君 「汗の顔水飲み込みし音深く」

・明るい君。正直な君。君のいるところ笑いがあったね。水の飲む音が深く長く君の大きな未来のため。

●梶浦悟君 「夕焼けに一身浴びし影延び延ぶ」

・真正直で素直な君。そのままのびてゆくといいなあ。全身で事にぶつかり一歩一歩自分を伸ばしているね。

●北本利美君 「きさらぎの牛乳の夜の深い眠り」

・ロンドンの霧の夜のような夜。明日への英気を養うための眠り深ければ深いほどよい。

●北本康弘君 「髪かりし素顔まぶしき霧は満つ」

・涙もろい君。優しい性格の君。しかしその中にあってもまばゆいような男子の子は育っている。

●静間勝巳君 「夕焼けを頭から浴びはじける子等」

・いつも黙っている君。夕焼けのオゾンを十二分に浴びてホウセンカのようにたくましくはじける

●杉本雅章君 「腕組みて北斗見据えていたりけり」

・人に同情の目を向ける君。君にはたくましさを感じる。物事を真正面から正しくみて進もう。

●寺田鉄朗君 「雲速しその下に鉄朗ひきずる影」

・直情な君には不正はゆるされない。鉄をひきずるような遅い歩みでもよいたしかな道を。

●中里裕君 「凍星にまなうら熱く目を見開く」

・ほめられたときの君のうれしそうな顔。たしかなものを見極める目をいよいよ開こう。

●西ヶ花孝司君 「街路樹の芽生えぷつぷつ卒業期」

・明朗な君。君の高笑いを思い出す。木々の息づきも始まっている。さあ孝司君も。

●晴山進君 「忍び泣く少年の夜や遠い汽笛」

・スポーツマンの君。やわらかい少年の感受性。さあ充実した生活を創ろう。

●平塚安弘君 「風白し泥田の牛のたじろがず」

・美しい目の君。小さい身体で懇親の力で生活していた君。たじろがない精神をね。

●前田育雄君 「少年の鼻梁豊かや青き朝」

・スポーツマンの反面案外身体の弱い君。すがすがしい少年の朝の前途は洋々だ。

●蓑輪正巳君 「北窓を開く失意はもう見えない」

・メガネをかけた君。物事を深く考えようとしている君。北窓を開くは春。斗志をたぎらせた君。

●三井武志君 「銅像を写しひとみの生き生きと」

・やさしい目の君。銅像を写した目。僕も負けない。やるぞ。

●皆川淳志君 「雪像の肩みて己が肩いからす」

・クラスの台風の眼のような君。素直な性格の君。ばさら像を見ている僕の肩がいかった。負けないと。

●宮本基行君 「万緑に染まりし少年の呼吸音」

・色白な君。気の優しい君。規則正しい呼吸の音から君の大きな未来が生まれてくる。

●村井敏浩君 「馬の目の闇に息づき深い呼吸」

・明るい君。君のあるところに・・・(判読不能)・・・馬の夜の目の深い輝き、深呼吸のあと自分のものに。

●山口公一君 「黒牛にどの影もあり動き出す」

・やさしい君の性格。皆に好かれる君。たくましい黒牛には一つ一つ確かな影がある。男の動き。

●我妻新吉君 「焼野越え来て雑草のごとく君生きよ」

・クラスの皆から頼もしがられている君。たくましい雑草のようにがんばろう。

●斉藤公也君 「金魚浮かぶ少年の目の高さまで」

・ウィットに富んだ君。先生も思わず噴出したことがあった。金魚の心も理解できる少年。

●岡田浩君 「雪掘って暖かい土僕はつかむ」

・途中から転校してきた君だったが、すぐ皆と仲良くなったね。暖かいものを心に秘めた君。

●猪川真智子さん 「遠雷に物思うこと深まりぬ」

・活発な人。甘える人。何かとクラスの話題になったね。物思いにふける人(本当は)

●石井真澄さん 「雪道の真直ぐにあり歩かんか」

・おとなしい人。自分の思うことを思い切って言えない人。がんばろう。信ずる道を真っ直ぐ。

●小野寺鯛子さん 「松の芯たしかな青さ育てしこと」

・(判読不能)いつとはなく青を育て伸ばしてゆく。

●金島智子さん 「マッチ火を囲み瞳に深々と」

・真面目で意志の強い人。いつまでも正しく炎を瞳に宿した生活を。

●佐々木敦子さん 「やわらかき言葉春立つ日もつづき」

・いつもにこにこしている人。芯の強い人。柔軟な感情の育ってきているあなた。

●渋谷みどりさん 「卒業す磨きしガラスばかりの中」

・活発なお渋さん。元気よかったな。ガラスの隅々まで磨かれた気持ちの引き締まる卒業式。

●鈴江良子さん 「みずみずしきみかんを指で深くわる」

・正しいことにとても積極的だった人。果物のみずみずしさもあわせて自分のものにね。

●関晴与さん 「雪積みて透きとおるもの見つめけり」

・おとなしい人。芯のとても強い人。物を見る眼の確かさこそは大事なことなのだ。

●鶴本妙子さん 「雪像の解け行く先に己おり」

・おとなしい人。声のとてもきれいな人。雪像の解けてゆく先にある自分の確かな影。確かな眼の人。

●刀根佳子さん 「眉くむ春山少女のどみせ笑えりき」

・ほがらかで素直な人。明るい声が教室の中にいつもあったね。大きな声で笑うのも後幾日。

●鳴瀬厚子さん 「かつかつと瓦礫の道を蟹歩む」

・蟹の歩幅はまことに狭いもの。しかしやはり蟹は一歩一歩歩いている。人間の歩く道もたいへんだが。

●武藤富士江さん 「ぶどう食う記憶薄れし日のことなど」

・1年生に入ってきた日。お菓子や果物を一人で食べているときふと思い出してみる。遠い過去のこと。

●藤田百合さん 「枯野中ポケットに種子びっしりいれ」

・ポケットに種子がびっしり。命のある種子。しかもたくさんある種子。さびしくなどないぞ。

●八木静江さん 「石の色はるかに思うことのあり」

・クラス一のジャイアンツ。責任感がとても強い人。6年間の思い出から。大きくステップを踏み出そう。

●椿邦美子さん 「プラタナス四肢伸び心はずみおり」

・元気一杯。活発な人。プラタナスの葉。この世の空気を全部吸ったのではと思うほどたくましい葉。

●高橋久美子さん 「卒業やアレグロ雪の降り積む音」

・黒い瞳の人。軽快な音楽に乗って未知の世界に向かってがんばろうね。

●一宮紀子さん 「釘打って真を貫くものほしき」

・一心に打ち込む釘。私たちの生活も本当のこと。正しいものをどこまでも掘り下げよう。

●最後に大久保先生から

あめでとう、皆さん

あの雨の日に先生に怒られた人

野原の赤松の下で語り合った人

黒いつぶらな瞳に虹を宿したように未来の

ことを言い合ったものだ。

ああ、泣いた顔をもあったね。

人に言われない悲しみを持った目

しかし何もかもすぎ去った過去のこと

前を向き決して退かない金剛の精神を