私の仕事

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 NTTコミュニケーションズに勤めている私ですが、現職の「ITマネジメントサービス事業部」ではどんな仕事をしているのか、よく質問されます。一口でいえば便所のマットは「ダスキン」に、事務用品は「アスクル」にお任せするように、お客様にとってやりたくない、やっても割高になる業務をお預かりし代行する仕事です。これを世間では「アウトソーシング」と呼んでいます。これとNTTコミュニケーションズとはどんな関係なのか、何故そんな人の世話にまで手を出すのか、それってやりがいのある仕事なのか、2年間の経験で感じたことを紹介します。

 私は平成152月末に「ITマネジメントサービス事業部アウトソーシングサービス部」という現在の職場に異動してきました。それまでは「ネットワーク事業部」というネットワークの設備構築を主たる業務としておりました。急増するインタネットトラヒックに対応した拡張工事や新しい技術を取り込んでコストを抑えるという施策を行ってきました。ここでは外のお客様に向けて商売している事業部に対し、構築した設備を卸す業務が主で、直接お客様と接することはありませんでした。

 新しい職場ではお客様が保有するルーターのようなネットワーク設備やコンピュータ等の保守運用を行います。私どものビルにお預かりした装置(これをハウジングやコロケーションサービスと呼んでいます)やお客様のビルに設置された装置の監視を行い、故障発生時にはいち早く回復させます。故障そのものは四六時中起こるものではありません。しかし、お預かりした装置が故障した場合、その原因を特定し、再発防止策も含めてお客様への報告責任があります。故障時の影響がお客様にとって致命的な場合、たとえば金融業界でいえば、日中帯にATMが使えなくなる場合、お客様からの叱責は想像以上のものになります。机を蹴飛ばされ名刺を投げ返されることもあり、私の職場ではこのようなお客様への謝罪が主な業務となります。

また、お客様との契約にもよりますが、通常、24時間365日監視を行います。平日の夜中や土日も勤務しているのです。といっても世の中皆休んでいる時間帯に社員が直接監視するわけではなく、パートナー会社からのエンジニアに作業してもらっています。彼らはマニュアルに記載されている手順に従って監視業務を行いますが、重大な故障、回復の見通しが立たない場合などは真夜中であれ直接社員に電話し、指示を仰ぎます。ですから、担当の社員は帰宅後も気の休まらない場合が少なくありません。

 これでお分かりのように「アウトソーシング」という業務は24時間緊張し続けること、お客様からのお怒りを覚悟し謝罪を行うことなど、強いストレスのかかるものといえます。個人差はありますが、大多数の社員は日々相当のストレスをためているのです。

 何故こうした業務にNTTコミュニケーションズは参入するのでしょうか?10年ほど前までは電話サービスに依存してきた収入構造が危なくなってきたからです。企業向けに着実な収入を伸ばしていた専用線サービスも同様です。インタネット技術が進展し、専用線サービスにとってかわるIP-VPNや広域LANが主流になっています。専用線サービスよりも高速広帯域化が進み、しかも料金は安いのです。高速道路の車線数は増えても、高速代金は逆に安くなるという事業構造の変化に対する増収策として「ITマネジメントサービス事業部」が誕生しました。

 インタネット技術の進展により価格面でいえば、通信は安くて高速広帯域になったといえますが、技術的には従来の専用線に比べると故障の確率が著しく高くなっています。機器単体の故障なら比較的簡単ですが、ネットワークやコンピュータといった様々な装置が連携して動作するために、どこが故障の原因なのか、今後どう改善していけばよいのかといった専門能力が必要になります。こうした領域に着目し、新たな収入源を確保するために私の現在の職場があるものと認識しています。

 会社の意向はよくわかっているつもりなのですが、現場で作業している社員の意識とのギャップはかなり大きいと感じています。真夜中にたたき起こされたり、お客様からの叱責を受けることが社員にとって想像を越えるストレスとなっています。こうした中で私が行ってきたことは社員と一緒に行動してストレスを分散することです。お客様の叱責を一緒に受ける、社員と一緒に徹夜をし汗を流す、リアクションを一緒に考える。直接生の声を聞くことが避けられないお客様から何も言われなくなり、契約解除となれば、収入はなくなるのです。この2年間で行ってきたこと、感じてきたことを一部紹介しました。まだ、私自身の回答は出来上がっていませんが、七転び八起きで平成17年も望んでいくつもりです。