中谷巌先生(5/17朝日新聞主催セミナより)

IT革命下における21世紀の企業戦略
(eエコノミーの衝撃)

 

(プロフィール)
 ・元一橋大教授、現在三和総研理事長、多摩大教授、国立大教授がSONY社外取締役になるならないで役所に旋風を巻き起こした元小渕首相ブレイン
 ・IT革命下における21世紀の企業戦略
 ・最近の著書「eエコノミーの衝撃」の内容と同様の講演
 ・示唆に富んだわかりやすい内容

(講演骨子)
・米国の成長率91〜95年:3%弱、96〜99年:4%強→米国の高度成長期が続く
・日本は90年から「失われた10年」という、「どうなるか」ではなく「どうするか」

○悲観的要素

・財政赤字650兆円の巨大赤字(国債残高350兆円を含む)
・当然、この状況を打開するには増税かインフレのどちらかであるが、政治家は票を失いたくないので増税はやらない。
・インフレになると借金は実質的に目減りする。だから先生達は日銀苛めをする「インフレを作り出せ」と。
・G7で財政赤字の代表格はイタリアであったが、最近は日本になってしまった。
・米国の双子の赤字(財政と貿易)は解消、今年の大統領選挙は黒字化した米国財政をどうつかうかが焦点という、好景気のため貿易収支は赤字のまま
・財政赤字に加え、日本の少子高齢化、過剰規制、企業リストラも悲観的要素
・国立大学の教授が私企業の社外役員になってはならんといった過剰規制、社外監査役ならOKというわけのわからない規制
・利益率を上げる、とくにROE(株主資本利益率)アップは必須

○楽観的要素

・IT革命の本格化、情報投資に対する尻上がり傾向、若者意識の変革、ビットバレー
・一橋時代の学生、エリートコースである一流企業への就職を蹴った事例、一流企業の人事担当者との時代遅れのやり取りに辟易し面白い人生を選択
・ネット株をどう読むか、株価はそもそも人々の期待感である。瞬間的な人気度合い。金融の世界で株価や為替のバブルは当たり前である。問題なのは根拠レスなバブルが存在すること。

○IT革命の本質

・取引コストの激減、買い手と売り手を結びつけるコスト、従来の流通が不要になること。デジタルデバイドと中抜き現象。
・無数と無数を繋ぐこと、インタネットオークションは無数の売り手と無数の買い手を結びつける、今までに成立しなかったビジネスモデルである。
・頒布型から個人型へパラダイムシフト。新聞の組み方は押し付けがましい頒布型、インタネットは個人型(一人一人の好み、顔が見えてくる)
・頒布型(traditionaltエコノミ):企業→流通→お客、DMや新聞広告
・個人型(eエコノミ):企業←インタネット←個々のお客、売り手主導から買い手主導へ
・サービスが収益の源泉(後述)

○成功事例

・デルコンピュータはオーダメイドPC販売会社、販売店との関係が元々ない、在庫不要、現金払い、受注生産、他社より30%安い
・デル同様に自動車もオーダメイドになる、オートバイテルがその先駆け
・ebayはオークションモデル、リアルの世界ではできないことがITの世界で可能、個人の売り手(不要になったもの)を個人の買い手に結びつける、不要なものが高く売れる。
・プライスラインはebayの逆で、逆オークション。顧客が何月何日どこそこ行きの航空券を発注、航空会社にその旨を伝え、一番安い会社を伝える顧客からの逆オークション。
・アスクルは事務用品などの販売会社。顧客事務所の在庫管理までサービスとしてしまう。顧客にとっては都合がよい(事務管理経費ゼロ)し、アスクルは顧客の在庫状況を見て適切に売りこめる。100人500億円の売上。
・シティバンクは顧客管理を徹底、顧客に渡したICカードを来店時チェックしてもらい重要顧客かそうでないか見極める。重要顧客に対してはベテランが個室で対応、そうでない顧客にはインタネットバンキングを進める。窓口経費一回1.07j、インタネット経費一回0.01j。

○ブロードバンド時代到来

・通信:個人化情報、操作難  メディア(放送):頒布型情報、操作易
・インタネットのブロードバンドが進むと通信とメディアは間違い無く融合する
・2010年にはアナログTVが消滅する、デジタルTVで融合が加速
・視聴率が無意味となる時代がくる
・コンテンツが勝負になる
・タイムワーナ(コンテンツ)+AOL(ISP)、SONY+フジテレビが融合の先駆け

○サービスが収益の源泉

・販売した後から商売が始まる
・PCただ、インタネットただ、携帯電話ただはいずれもサービスが収益の源泉
・車もただの時代が来る、ITSが進み、車のモニタでイタリアレストランがナビされ、車の料金はレストランが持つなど

○中抜き業者は生き残る

・インタネット化される業務は不要になる、しかし、人間はアナログ
・インタネット化できない領域、劇場体験、ハイタッチ、商品情報、メンテナンスは中抜きできない領域
・商品知識のない売り子からPCを買うよりもインタネットでデルから買った方が安い
・しかし、商品知識豊富な売り子なら売り子から買うのは当然
・だからアナログ的ビジネスの領域はある
・米国のショッピングセンタはショッピングが目的ではなくなる、エンタテイメントを楽しんだついでにショッピングをしてしまうというもの、Amusement Shopping Center

○日本企業の解決すべき課題

・コーポレートガバナンスの改革、経営と事業遂行を一緒にやることは不可能、戦略策定とオペレーションの分離
・インセンティブメカニズムの構築、悪平等主義の給与体系、100%固定給はやってもやらなくても同じ、ならば、やらない、となる。固定給30%、70%は利益連動給とすべき。米国ではWar for the Talent(人材獲得競争に負けるな、という意味)
・eエコノミ下のビジネスモデルの構築、オープンな文化たれ、住友系、三菱系といった閥の境界を越えた提携が必須、異色の人材を大切にしなさい
・会社のやり方を180度変更せよ