松井証券社長(5/17朝日新聞主催セミナより)

新世紀におけるビジネスモデル

(オンラインビジネスの展望)

 

(プロフィール)
・日本郵船で規制緩和の荒波で辛酸を舐め、それをバネに証券業界に新風を巻き起こした今話題の人物、47歳という年齢にあわず独創性をもったカリスマ的人物
・一橋卒後、日本郵船に入社、81年に海運業界でビックバン、海運業の完全自由化を体験(レーガン政策によるデレギュレーションの影響をもろかぶる)
・新日鉄などの鋼材を運搬、鋼材一本4000jがいきなり250j
・海運業の自由化により「舶来品」が死語となった
・ピカピカのコンテナで顧客を掴んできたのが、自由化後は低価格一本
・87年ブラックマンデイ頃松井証券に松井証券社長の娘婿として入社
・松井証券は80年の歴史のある中堅老舗証券

(講演骨子)
「証券業界に入って既存業態は崩壊することを予言しつづけ、自ら会社の業態をIT革命に最適化、インタネットトレードNo.1会社にした47歳の経営者の話」

○胡座をかいた証券業に唖然
・自由化された海運業と比べ、競争なし、金は天から降ってくる
・社内競争はあっても業界間競争がない、顧客商売をしていない
・証券業界は規制に守られた護送船団、MOFの僕として胡座をかいてきたことに危機意識
・90年のバブル崩壊で18万人の証券マンが8万人へ激減、山一は消滅
・大手証券も経営急下降、ところが最近の株価ブームで復活、相変わらず業態を変えない大手証券に対して警鐘を鳴らしつづける「これは地獄に落ちる前の宴」と
・MOFによる金融ビックバン、99.10.1の証券手数料自由化開始
・社長会では異端児扱いされっぱなし

○インタネット取引で証券業界に革命
・当初予想の1/3か1/4を予想していた手数料がなんと1/6から1/10になってしまった、その分扱い高は1日5%ずつ伸びた
・1ケ月で2.5倍、400億円だった1ケ月の売買高は翌月には1000億円、この4月には3000億円、年間換算で3兆6千億円
・1万2千人の野村證券は99年度機関投資家を含めて20兆円、松井証券は平均28歳の職員200人(月給100万円)ですべて個人投資家、まさにIT革命である
・5/16の証券協会発表によるとインタネットトレードユーザ数は日本300万口座、そのうち松井が70万口座、一方米国は3−4000万口座
・現在インタネット株取引している51社の6ケ月間の売買総額が4.5兆円、そのうち、松井証券は1.1兆円のNo.1(全体の1/4)
・海運業界同様の証券業界の体質に危機意識を抱き、80年続いた松井証券で営業部門を廃止、その代わり通信営業という形をとりセールスがないことを逆に差別化の材料とした。
・法律上自ら株の売買を禁止されている証券マンの意見は役立たない、だから営業はいらない
・営業部門廃止5年後顧客は5倍に増えた
・95年松井証券の営業利益率は大手をも含めてダントツのNo.1
・数年前にインタネットが登場、自分のコンセプトにぴったりのもの、即導入
・他の会社は、営業店舗を持ちながらインタネットトレードをやっているが、これは水と油を混ぜたようなもの、だから営業部門を廃止した

○IT革命の本質
・情報の価値を決めるのは供給する側ではなく受け取る側になったこと、企業からみると自分が与えてやるという天動説から消費者が中心という地動説への発想の転換である
・日本の大企業は依然として天動説、ITの時代で情報によって顧客を囲い込む発想が強い。インタネット上のオープンな場では、通じない考え方。
・どんなに質のよい情報をだしてもよりよいものが出たとたんに消費者には捨てられる
・松井証券の場合、株式チャートも自ら作成するのではなくプラットフォーム、即ち場の提供だけで、業者にベンダとして入ってもらっている。よりよいものがでてきたならすぐ取りかえる。あるいは複数のベンダを入れて、顧客に選んでもらう。
・ネットストック(システム名称)という場に無数のベンダのネットワークでビジネスをする、何がよいか選ぶのは顧客、囲い込まない、囲い込まれないといった地動説的な柔軟な発想でないとIT時代の新しいビジネスモデルは作れない(企業主導から顧客主導という意味)

○最後に
・3ケ月前の話は遠い過去、5年前の話は考古学、このスピードには感性でしか対応できない
・インタネット取引をやっているとPCがワンストップショッピンとなってしまう。某大手都銀の頭取の弁、インタネットを使ってワンストップショッピングする、という発言は自らインタネットを使ったことのない証拠
・松井証券の創業者の弁「相場で勝つ方法を知っているか?勝つまでやること、買ったら止めること」通常は負けるまでやる、負けたら止める。
・社長の選び方、負けたことのある人物を選ぶべき、成功者は連続して成功する確率は低い、日本の大企業はその逆をやっている、悪循環
・社員、従業員といった差別用語は死語、組織や仲間が大切