クララとお日さま  210702
 

妻の勧めで読んでみたノーベル文学賞受賞者
カズオ・イシグロの最新作
テレビで印象に残った「私を離さないで」を思い出しなら
読み進めると、案の定、重苦しくなる作品
結論から言うならば、お薦めしない作品だが、
心にずっしり来ることが多く、折角なので感想を交えながら
あらすじを紹介すると・・・

・遠い未来の話ではなく、人口親友(Artificial Friend;AF)が
食器やアクセサリーを扱うお店で買える時代設定
・そこで買われるのを待つ、型落ちのAF「クララ」が語り手
・彼女はとても可愛く頭がいい、フランス人みたい、ショートヘアで浅黒くて、
服装も黒っぽく、でもとっても親切そうな目をして周囲を良く観察し
学習し、気遣いが細やか
・新型が出てきて型落ちになった頃、病弱な女の子「ジョジー」に
気に入られ、親友として買われていく

・ジョジーが病弱なのは「向上処置(遺伝子編集)」がなされたから
・その処置をしない子は「落ちこぼれ」とみなされる
格差社会なので、お金持ちの子どもは皆、それをする
・娘の健康を損なってでも、それをしなくちゃならないという
母親の考えが恐ろしい

・母親は娘が死んだら「移植」するために、
芸術家に娘とそっくりの外側を作らせ
クララに、娘そっくりの動きや会話ができるよう学習しろ、と命じる
・太陽エネルギーで動くクララは人工知能なのに「お天道様信仰」者で
自分の代わりにジョジーの延命を「お日さま」にお願いする

・ジョジーは急に健康を回復して背丈も伸び友達が出入りするようになり、
クララはジョジーの部屋から物置に追いやられ、
大学進学とともに捨てられる
・廃品置き場で語るクララは、涙なしでは読めない・・・

・気持ちが分かるように設計しておいて、そんな冷酷なことを。
映画「AI」のデイビットを思い出す
・無償の愛を利用し尽くして、報いないのは、人としてどうか・・・